外来診療をしてみると、ほぼ毎週、顎・鼻下の髭剃り負けの方が受診されます。
一番確実な治療は外用剤を十分塗りながら、「髭を剃らない」ことですが...それができないので苦労することになりますね。
荒れている部位をよく見ると、単に赤くなっているだけではなく、ニキビも混ざっていることが多いです。
大体クリニックに受診される時点では、
髭部位ににきびがある → 髭を剃る → 肌があれる+ニキビの菌を周りにばらまく → またひどくなる+面積が広がる
上の様な負の循環に陥ていることが多いです。
治療としては、
① 化膿している部位があるなら、抗生剤の内服と外用
② 赤い・乾燥している部位には保湿とステロイド外用剤
を基本として行い、一度でも髭剃り負けで受診されたことがある方は同じ治療されていたはずです。
上の治療も大事であり、欠かせないことですが、髭剃りに関しては何も言わない医師が多いのではないか?と思いました。
もちろん、私が言うのが絶対正しいとは言いませんが、少しでも良くなるならその話をしてみたいと思います。
・髭剃りのポイント1
:洗顔をしてから髭を剃る
先ほど、ニキビの菌の話をして、その話からのつながりです。
洗顔前は老廃物・ほこり・酸化している皮脂などが混ざっていて、綺麗とは言えない状態です。
そこに、剃刀で(電動でも)物理的な刺激を加える? 考えてみると良くないな...と分かると思います。
順番としては朝であれ、夜であれ、
洗顔 → 髭部位に軽く保湿 → シェービングフォーム+髭を剃る → もう一度保湿
が望ましいです。
保湿はなんでもいいですが、私は当院から処方する「親水クリーム」をお勧めします。
その理由は「刺激が少ない」、「ほてり感に対して鎮静効果もある」、「それに安い」
・髭剃りのポイント2
:最小限の回数で髭を剃る
電動であれ、刃(T字型の)であれ、
物理的に滑る回数が多い = 摩擦が増え、肌への刺激が増える
ことになります。なるべく少ない回数で髭剃りを済ませるべきです。
多少の剃り残しがあっても、肌の治療を優先するべきです。
短く残っている髭をみると剃りたくなる気持ちは…私も同じです。
・髭剃りのポイント3
:急いでしない
特に朝、髭を剃る方に多いと思いますが、朝はいかに時間があっても、バタバタしますね。
なので、髭も早く剃ってしまいます。
早くすると、同じ場所を何回も剃ることになるし、肌にも優しくないです。
ポイント2とつながることですが、ゆっくり、1回で済ませるように髭を剃るのが望ましいです。
どうしても忙しいなら、夜剃るようにしてみるのもありだと思います。
・髭剃りのポイント4
:刃の交換は頻繁に
特にT字型の剃刀ですが、交換の頻度は皆さんどうでしょう?
自分が今までみていた患者さんは頻繁に交換する方が2週間1回、大体3~4週間で1回で、思い出したら交換する方もいました。
もちろん、人それぞれ、髭の太さ、面積、密度が異なるため、「これが正しい交換周期だ!」と言い切れませんが、理想的には7~10日がその目処だと思います。
もちろん、髭剃り負けがなく、問題ない方はあえて頻繁に交換はしなくても良いと思いますが、自分の経験からみると
髭剃り負けで受診される方は皆、髭が濃かったです。
刃が鈍っていると、力を入れないと切れ味が悪くなり、滑る回数の増加、深く剃ってしまうことになりますし、清潔面でも交換周期は短いのが望ましいですね。
しかし、T字型の剃刀の刃って案外高いものです。
ポイント2の「回数を減らす」が、刃の寿命を少しは延長させてくれると思います。
他は、髭を脱毛してしまう方法もあります。
そもそも髭を剃る必要がなくなるため、長期的には良いと思いますが、ばい菌による感染症がひどい状態では脱毛レーザーの使用が難しく、レーザー照射が痛いこと、金額がかかることが問題です。
あと、髭を格好よく生やしたい方には向いていません。
ある程度、髭剃り負けが落ち着いた上で相談してください。
・おまけ) T字型 VS. 電動
たまに質問されますが、どちらが良いのかは正解がありません。
電動だと、メーカーによって性能がバラバラで、電動も肌に触れる部位は消毒や掃除を頑張らないといけません
T字型だと自分が力や仕方を調整できることが良いですが、刃が高いのが問題です。
本人が電動を使って、荒れなくなったら電動が望ましい
T字型をずっと使っていたとしたら上のポイント1~4を参考にしてトライしてみたらいかがでしょうか?
よろしければ、明日からいろいろ試してみてください。
以上、髭剃り負けの話をしました。